風の中のマリア2010年03月15日 09:24

風の中のマリア
小学生のころ「長鼻くんというウナギの話」に出会った。

ウナギを擬人化し鰻目線で自らの成長過程を追う物語だったが、
自然科学に裏付けられた疑似ドキュメンタリーで何度も読み返した記憶がある。

タイトルの「風の中のマリア」であるが、題名だけでは何の本だか分からない。
たまたま書店の自然科学の棚に置かれていたので手に取ってみた。
主人公はオオスズメバチ(べスパ・マンダリニア)である。

この手の擬人化された構成は読者がいかに感情移入できるかで好き嫌いが分かれるが、
数ページを捲っただけで自然に物語に入っていくことができた。

内容はスズメバチの別名キラービーの通り戦いと殺戮の日々なのだが、
みなしごハッチの母子離散の原因となったスズメバチの襲撃を
逆の立場から見たスズメバチの母子関係を基に描いている。
ただし、事象や行動も自然科学の観察と研究の裏付けが為されており、
単なる母子物語とは異なる。
スズメバチの一生を帝国の興亡になぞらえたことで王国コロニクルを読んだような読後であった。
また、冒頭の長鼻くんのように何度か読み返したい本でもある。

余談だが、クワガタ採取をする者にとってぶぅんという重低音の羽音は大敵。
知っていたようで全然知らなかったべスパ・マンダリニアの世界。
敵の生態を知っておいて損はないだろう。

百田尚樹著 講談社刊

コメント

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://uminofarm.asablo.jp/blog/2010/03/15/4949024/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。